とりあえず萌えたものについて書いてこうかな
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なんとなく、甘い銀妙を書きたくなった(笑)リクエストに応える前に、ちょっとしたウオーミングアップ的な気分で(笑)
2 気が付けば、時は過ぎて
ふわ、と鼻先をかすめた甘い香りで、いつの間にやら洗濯物に埋もれて眠っていたお妙はゆっくりと目を覚ました。
体を起こすと、抜けるような青空が軒下から見え、彼女は一瞬息をのんだ。
一拍後に、轟音を上げて宇宙船が飛行していく。
ああびっくりした、とお妙は息を吐きだした。父上がよく言っていた、抜けるような青空がそこにあって、もう二度と観ることがない、開国をしなかった頃の空に逆戻りしたのかと思ったのだ。
「目ぇ覚めたか?」
「え?」
ぼーっと春の空を眺めていたお妙は、唐突に響いた声に慌てて後ろを振り返った。
「何してるんですか?」
「一話目の再現」
「・・・・・・・・・・」
本格的なクッキング、と新八から突っ込まれた腕前を、今まさにちゃぶ台の上で披露している。
「俺くらいの甘味ストになるとだな、分量測らなくてもふんわりしっとりしたスポンジが作れんのよ」
「誰も何も聞いてないし、頼んでないし、ていうか何でいるんですか、帰れやコラ」
「いくら銀さんでも、いっぺんにそんなに何でも出来ないんですけど。どれか一個にしてくんない?」
うまい具合に生クリームで飾り付けた、イチゴがつややかな純白のケーキを前に、銀時がフォークを取り出す。
「よこせ」
「おねーサーン、それ、恐喝だよね?なにその凶悪な三文字。」
「家にあった材料でこしらえたんですよね、そのケーキ」
だったらうちのもんだろうが、ああん?
立ち上がり、ケーキの目の前に腰をおろしたお妙に、銀時はにやっと口を端を上げて笑った。
「あいにく今日は仕事があったんでね。全部俺が買ってきたんですー」
だからお前のもんじゃねぇの。
彼女の手が伸びる前に、とケーキの皿を取り上げ、抱え込む銀時に、目を瞬いたお妙が悲しそうに顔を伏せた。
「銀さんの薄給じゃ王美屋のフルーツケーキは買えませんものね」
「うるせー!いろいろ支払したら、ちょっと高級なイチゴと材料しか買えなくなったんだよっ!」
「ハンドメイドはハンドメイドの良さがありますから、どうぞ心行くまでご自分で作ってご自分で食べてください」
「腹立つ!なんか腹立つ他人に言われると!!」
「で、うちへの入金は?」
にこにこ笑うお妙に、今まさにケーキを口に運ぼうとしていた銀時の動きがぴたりととまった。
「も、もちろん支払ったさ。新八くんは優秀な万事屋だからね」
「一体いくらです?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・あ、やべ、俺もう帰るわ。レディース4始まるし」
「まてやコラ」
がし、と襟首捕まえて、逃げようともがく銀時の顔を、お妙は後ろからのぞきこんだ。
「一話ネタが出てきたところで言いますけど、新ちゃんがファミレスで働いていたころは、少なくてもきちんと一か月に一度、お給料がもらえたんですよ?それが今となっては不定期で。ねえ、銀さん。固定給って単語ご存知ですか?」
「じゃあいいますけどねっ!」
そのお妙を振り払い、銀時は笑顔で詰め寄る女に冷や汗をかきながら、逆切れする。
「新八が勝手に万事屋で働きたいって言ってきたんですけど!?俺頼んでねぇし!?つーか、あれだ!お前が変な身売りしようとするから、事態が厄介になったんじゃねぇかっ!?」
「過去のことを持ち出すなんて、小さい男ですね」
「お前が持ち出したんだろうがっ!!」
給料くらいでがたがた言うな!!
「大体、お前が身売りなんぞせずに、道場うっぱらえばそれでよかったんじゃねぇのかよ!?」
「親のモノを子供が大切にするのの何が悪言ってんだよ、おらあああああ」
「おまえの場合、もっと大切にするものが他にあるだろ!?女らしさとか・・・・・おんな・・・・・らしさとかっ!!!」
ぎりぎりぎりぎりと締めあげられて、銀時は「死ぬ!マジで死ぬ!!」と蒼白で叫んだ。
「銀さんも大事にしてくださいねぇっ!責任あるっ・・・・・大人っていうっ・・・・・姿をっっっ!!」
「要所要所でしまってんですけど、おねーさあああああん」
ギブギブギブギブ、と首筋に絡まる、万力のような破壊力を秘めたお妙の手を叩いて、銀時は大急ぎで彼女から離れると、ぜーはーと肩で息をする。
「て、手加減ってのも大事にしろやコノヤロー」
「銀さんが死ねば保険がおりますから」
「いつのまに掛けてんだよ!?冗談じゃねぇぞ!!」
「で、新ちゃんのお給料はいくらなんですか?」
にっこり笑って言われて、銀時は、視線をそらさざるを得ないのだった。
「なんで・・・・・こんなことになってんの、俺・・・・・」
「次は道場の拭き掃除お願いしますね。」
「はい・・・・・」
銀時が作り上げたケーキを食べながら、お妙が居間から指示を出す。新八のお給料が5000円と知ったお妙が、怒り狂った結果である。
つまりは、身体で払えやコラ、ということである。
「ぜってー泣かす・・・・・あの女ぜってー泣かしてやるっ」
ていうか、俺、今泣きそうなんだけど。眼ぇかすんでんですけど。
「・・・・・銀さん」
泣いてんじゃね、俺、泣いてんじゃね!?と目をごしごしこすっていた銀時は、後ろから響いた魔王の声に、ばっと振り返った。
指示だけでは飽き足らず、監督にでも来たのか、お妙が道場の入口にたっていた。
「ああ?まだなんかいちゃもんつける気かよ?」
半ばキレ気味でそう言えば。
「一応、感謝してますから。」
「あ?」
お妙から予想もしなかった言葉が飛んできた。
思わず黙り込む銀時に、彼女はにっこり笑う。
「一話目のケーキをいただきながら、ちょっと思ったんです。気づけば、銀さんと出会ってずいぶん経つなぁって。」
「諸事情でもしかしたら半年くらいかもしれないけどな」
「そういう大人の事情はさておき、私だって一応、感謝してるんですよ?」
銀魂のヒロインなわけだし。
「へー・・・・・お前がヒロインなんだー。へー、知らなかったー。つーか断然タマとか月詠のほうが女らしいしぃ、女として可愛げがあ」
そのセリフは、お妙から繰り出された必殺の一撃を前に吹っ飛んだ。
「テメェ、殺すぞ?」
「ヒロインのセリフじゃねぇだろ、コノヤロー!!!」
壁にめり込んだ銀時が、血を吐きながら叫んだ。対してお妙は壮絶な笑顔を浮かべている。
「感謝してやってんだから、ちっとは殊勝に聞けや、この腐れ天パ」
「俺の!!この!!姿のっ!!!どこをどうとったら、お前に感謝されてるってことになるわけ?!」
お前の眼は節穴かっ!?
明らかに殴られてるよね!?そして、明らかに雑用だよね?明らかに今、お前にこき使われているよね!?
「そんなことはどうでもいいじゃないですか」
「俺の労働力全否定!?」
「・・・・・・・・・・銀さん。」
「ああ!?」
いい加減腹立ってきた、と体制を立て直し、乱暴に雑巾をバケツに放り込むと洗おうとする彼に、お妙は「ずっとそこにいてくださいね」と朗らかに言いきった。
その一言に、銀時の顔から血の気が引いた。
「なにそれどういう意味それ!?永久奴隷宣言!?」
「そ・・・・・いえ、違いますよ?」
「いま肯定しただろ!?ポジション、決定しただろお前の中でっ!?」
怖いわー、おま・・・・・ほんと、怖いわー!!
そんな、距離を取ろうとする銀時を見詰めたまま、お妙は笑顔のまま静かに切り出す。
「違いますよ、銀さん。ずっと、新ちゃんと神楽ちゃんの傍にいてあげてくださいねってことです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
唐突に繰り出されたセリフに、一瞬毒気を抜かれ、濡れた雑巾を持ったまま身構えていた銀時は、息を飲んだ。
「頼みますね?」
ふわりと笑ってそれだけ言うと、背中を向けるお妙に、銀時はばしゃん、ともう一度雑巾をバケツに放り込む。
それから全身全霊で溜息をついた。
「冗談じゃねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
振り返るお妙に、銀時は仏頂面で吐き捨てた。
「アイツらの暴走に一人で付き合うほど、銀さんはもう若くないの」
それから、バケツにしゃがみこむと、雑巾を固く絞って、ぽん、とお妙に放った。
「テメェも手ぇ貸すんだよ」
アイツら大人にすんのに。
受け取ったお妙は、モップとかあったよな、と道場の隅に歩いていく銀時に目を細めた。
気がつけば、時は過ぎて。
いつのまにやら二人、しょうもない子供二人を抱えた親のような気持になっている。
「・・・・・・・・・・そうですね。銀さんに任せっぱなしにしてたら、将来不安ですものね」
「テメーに任せてる方がよっぽど将来不安だよ」
振り返り、半眼で告げる銀時に「あら、どうしてです?」とお妙が首をかしげた。
「当たり前だろ!?お前に任せてたら、神楽はろくでもない男に惚れるだろうし、新八は新八で女知らないまま大人に成っちまう!!」
「銀さんに任せてても同じだと思いますけど?」
「ばっか、お前、少なくとも新八は童貞をすてられ」
顔面を雑巾で拭かれて、銀時は「すんませんでした」と力一杯誤った。
「まったく。」
くるりと銀時に背を向けて、お妙は天井を見上げた。
「どうしようもない男に引っかかったものだわ」
その彼女の独り言に、それは新八の事か?それともお前自身のことか?と聞こうとして銀時は止めた。
天人が空を飛びまわるこの時代に、人の居ない道場と姉を守ろうとする少年に、大事なものを見つけた自分。
その自分も、もしかしたら、このろくでもない女にはまってるのかもしれないと、そう思ったから。
「さ、道場の掃除が終わったら、次は屋根の修理、お願いしますね」
「あのさ、オネーサン・・・・・もうちょっと俺のポジションひきあげてくんね?」
「ボトル一本いれてくれたら考えます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
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