とりあえず萌えたものについて書いてこうかな
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金田一シリーズ「黒猫亭事件」を下敷きにした、ダブルパロディも三話目ですが、内容は全然すすんでません><
そんなんですが、宜しければドウゾ(笑)
ふうん、と唸るような溜息を漏らして、響也は凶器が発見された天袋を見上げている。そんな彼を横目に、茜は部屋を突っ切ると、襖と壁の交わる一角へとすたすたと歩いてきた。
「ここに、」
彼女は言い挿して、その場にしゃがみ込んだ。
「血がべったり着いているんです。」
「どれ。」
茜の台詞に、天袋を見上げるのをやめた響也が近づくと、なるほど、襖側の一角にラグが敷いてある。それをめくりあげた先の畳に、べったりと、血をふき取ったような跡がのこされていたのである。
「ここで殺人があったわけだね?」
じっとその赤黒く変色した血の跡を眺めながら、ぽつりともらす響也に「おそらく。」と茜が苦い顔で答えた。
「ふ~ん・・・・・。」
その血痕から彼は目を上げると、すぐそこにある襖をじっと見詰める。手袋を嵌めた手を伸ばし、しきりと襖を撫でる検事に、茜が眉間に皺を寄せた。
「どうかしましたか?」
「うん?いや・・・・・。」
つと立ち上がると、響也はそのままラグの敷かれていた場所を離れて、うろうろと和室の中を歩き出した。
「?」
歩くたびに、じゃらじゃらと金属音を立てる、響也を見詰めていた茜は、彼が顎に指を当てたまま、つと立ち止まるのに目を瞬いた。
彼は床の間の隣にある押入れの前にたたずむと、ゆっくりとしゃがみ込んだ。すぐ横には、割と大きめな窓がある。
「見てごらんよ、刑事クン。」
彼はすっと目を細めて楽しそうな笑顔で彼女を振り返った。
「ここの畳、箪笥の跡がついてる。」
「え?」
慌てて近寄った茜が、響也の隣に腰を下ろし、「あ!」と短い声を上げた。
そこには、変色した畳の上がへっこんでおり、重いものがおいてあったような跡が残っていた。
この家の住人は一週間ほど前に引っ越しているから、箪笥なんてものは何処にもない。響也は目の前にある押入れの戸を見詰め、鋭い視線のまま「誰も押入れの前に箪笥なんか置かないよね?」と低い声で切り出した。
「あ・・・・・・。」
確かに。
重いものを乗せられたような跡のある畳。響也は目の前の押入れの襖に手袋を嵌めた指を走らせ、不意に、口元に笑みを浮かべた。
「これ、最近張ったようだね。他と良く似た色だけど・・・・・ここだけ新しい。」
あっさり手袋を脱ぐと、響也は爪を立てて、襖の縁からゆっくりとそれを剥がしにかかる。ぼうぜんとそれを眺めていた茜が、慌てて、「検事!それは鑑識か誰かを呼んで」と止めに入った。
「大丈夫だって。こう見えても僕、バンドボーカルだよ?」
「こういうものを剥がすのに、バンドのボーカルだと何が良いんですかっ!」
「女の子の扱いはいつも慎重だってコト。」
「全然関係ありませんからっ!」
あ!
茜がとめるのを無視して、響也は難なくそれを剥がしてしまった。そこには。
「ビンゴ、だね。」
「・・・・・・・・・・。」
大きな血の染み・・・・そう、殴りつけられて飛んだ血のしぶき、と言った感じの大きなものがべったりついていたのである。
「犯人は割りとずさんだねぇ・・・・僕なら気持ち悪くて、この部分を剥がしてから張るよ。」
そもそも、あなたが犯人とか、駄目じゃないですか。
胸の奥でそんな突込みを入れる茜を他所に、彼はやおら立ち上がると、先ほどのラグの下から発見された血痕を指差した。
「恐らく、このラグのあった場所に、箪笥がおいてあって、この箪笥の跡がついている畳が、あそこにあったんだろう。」
それで、事件が起きた際に、畳に付着した血を隠すために、その畳と血のついた畳を取り替えたんだね。
「ですが。」
響也に習って立ち上がった茜が、眉間に皺を寄せたまま、首を捻る。
「何故こんな・・・・適当な方法で隠したんでしょう?」
殺人の痕跡なのに。
「だよねぇ・・・・・・。」
幾ら引っ越すからとはいえ・・・これだけ跡が残っていれば疑われるのは必至だろう。だが、それよりもなによりも、もっと不可解な謎がある。
「それに刑事クン、考えてもみなよ。」
くるっと振り返った響也が、真剣な顔で茜を見た。検事として、法廷で犯人を追い詰める、その雰囲気そのままに。
「君から報告のあった遺体は、かなり損傷していた。すくなくとも、死後三週間は経過している。なのに、この家の住人が引っ越したのは、たったの一週間前だ。」
「・・・・・・・・。」
ぞくり、と茜の背筋に冷たいものが走り、目を見開いた彼女が「それじゃあ、」とかすれた声を出した。
「この家の住人は・・・・・。」
「二週間も、こんな殺人の起きた家で暮らしてた、ってことになるかな?」
鋭い光の滲む瞳で、響也は部屋を見渡し、「正気の沙汰じゃないよね。」と苦々しくもらした。
「あ。」
「わあ、ガリュウ検事!」
殺人のあった喫茶黒猫。そこの元の持ち主でマスターの「叉火旅人(またびたびと)」と妻「叉火翔子(またびしょうこ)」の行方が何故かつかめていなかった。引越し先の届出は出ていたし、すぐに見つかるものと踏んでいたのだが、居住予定のマンションには引越しの荷物だけが届いているだけで、本人達の姿はなかったのである。
警察としては、身元不明の遺体が、翔子のものではないかと踏んでいたのだが、引越し業者が引越しの一日前に荷物を全部新居に移動させる際、この夫婦に会っているので、死亡推定時刻から、彼女ではないと判断せざるを得なかった。
そうなってくると、この家に・・・・ひいては喫茶店で働いていた人間に事情を聞かなければならなくなるわけで。
「やあ、オデコくんにお嬢ちゃん。」
にっこりとすがすがしい冬の空気に似合いそうな、爽やかな笑みを浮かべる響也と、その隣で無表情でかりんとうを噛み砕く茜は、黒猫で働いていた学生アルバイトに会う為に、こうして彼女の通う高校へとやってきたのである。
「検事もアルバイトの角谷美根子(すみやみねこ)さんに会いに・・・・・?」
学校の校門前でばったり出会った法介が、遠慮がちに尋ねるのに、茜が「君が担当弁護士とはね・・・・。」とかりんとうの袋に手を突っ込んだ。
「ええまあ・・・・・。」
「大変だね、オデコくんも。彼、完全黙秘だから。」
肩を竦める響也に「そうでもないんですよ!」と横からみぬきが口を挟んだ。
「大地さん、なんと、黒猫の隣にあるお屋敷の執事さんなんですって!」
「へえ。」
目を丸くする響也の反応に、「みぬきちゃん!」と慌てて法介が止めに入った。
「あのね、みぬきちゃん・・・・一応、俺と検事は敵同士だから。」
あんまり有益な情報を流さないでくれる?
「あ、そうでしたね!でも、ガリュウ検事と茜さんなら、これくらい知ってますよね?」
にこにこと邪気のない笑みを向けられて、響也は茜を振り返った。
「僕のところにはそんな報告は来てないけど?」
「検事が尋問してるんじゃないんですか?」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
無言で冷たい空気が流れる二人を他所に、法介が「それもこれも、みぬきちゃんがですね、帽子クンで驚かせたことに端を発して」と何故かフォローを入れる羽目に陥っていた。
「ま、そんな細かいことはともかく、皆で仲良く美根子さんの話を訊きに行きましょう!」
自ら不穏な空気の種を蒔いておきながら、はりきって校門を潜るみぬきの姿にやれやれ、と肩を竦めた響也が続く。
「今回はフェアに行こうか、オデコくん。」
「そーですね・・・・あんまり嬉しくないですけど。」
のろのろと歩き出す法介は、ふと、佇んだままかりんとうを口に運ぶ茜を振り返った。
「あの・・・・行かないんですか、茜さん。」
膨れっ面の彼女は、振り返る法介に向かって、えい、とばかりにかりんとうを投げつけた。
「ちょ・・・・茜さん!?」
「なんでもないわよ!」
ぶすっと頬を膨らませる、なんだか子供じみた表情で「苛立ち」をあらわしていた彼女は、靴音高く二人の後を追う。
「?」
首を傾げる法介に気付かず、茜は面白くなさそうに、ぽいっとかりんとうを口の中に放り込んだ。
(何がフェアよ・・・・この弁護士センセが絡むといっつも負けてるくせに・・・・・。)
ばりばりばりばり。
さくさく、よりもよっぽど強くかりんとうを噛み締めながら、彼女はこんな心境がどこからきたものなのか考える余裕もなく、ただ、妙ないらいらを胸に校舎の入り口を潜るのだった。
ちょっと響茜かも(笑)
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